左腕を失ったわたしには、一人では越えられない夜があったんです。
あまりに星が綺麗で悲しかった。
天に星が増えるのがこわかった。
星の光は死んだ光だから。
そんな夜に寄り添ってくれた人がいました。
その人を見つめず星ばかり眺めるわたしも、
星なんて見たくないのにって泣くわたしも、
全部全部受け入れてゆるして愛してくれました。
わたしの左腕を補って、一緒にたくさんのものを掴んでくれました。
きっとその人も星を見る夜があったし、
星を見る必要のない夜もあったのだと思います。
わたしはそのとき何かができていたかな、
できていたら良いな。
その人にもきっと失ったものがあって、
一緒に掴めたものがあると良いな。
きっとあるだろうな、できていたろうなって思えるけれど
それはできていたんじゃなくてさせてもらえていたんです。
ゆるしあえていたし、求めあえていたし、愛しあえていました。
けれどお互いに温めあえていたのに、
いつからかそばにいても凍える夜が続きました。
寒いって言いながら、その温かさを求めながら、
凍えて泣くしかできませんでした。
左腕はやっぱりなくて、少しずつ零れていきました。
その人からも零れたものがあったのだろうな。
気付けなくて動けなくて拾えなくて、ごめんね。
お互いにお互いしか見えなかった。
夜は暗かったんです。
そうして幾度と夜を超えて、ついにその朝が来ました。
それはたくさんのことを照らして輝かせて、
だけど出発しなければいけない朝でした。
今までみたいに一緒にいるときに目がさめたけれど、
その人は先に目覚めて出発の準備を整えていました。
その人は自分もわたしも見つめてくれて、
夜の暗さを受け入れて、
星の光にも朝の光にも感謝したのでした。
そうしてその人はロケットに乗って
驚くほどの速さでわたしのもとを去ってしまいました。
わたしはもたもたと準備をしながら、動けませんでした。
星のない幸せな昼間がなくなってしまった。
なくなっちゃった。寂しい。辛い。苦しい。
けれど夜が来たら、とてもとても綺麗な一等星があるんです。
お互いもう一人でも夜を越えられるんだよ
大丈夫だよって
光が言ったんです。
その人はわたしの中で死んでしまったけれど、
死んでしまった光としてわたしの道を示してくれます。
いつかお互いが旅を続ける中で、
また同じ星に降りることがあるかもしれないし
あったらとても素敵だと思うけれど、
その人もわたしも星になってしまったんです。
星だったのに、求めてしまっていたんです。
地球と月なんです。
いつかまた誰かと星を眺めるんだと思います。
そのとき一等星は流れ星になるのかもしれません。
だけど、向こうの星から見たときに
わたしもできる限り輝いていたい。
あなたの道は正しいんだよって、できる限り示したい。
一人では越えられない夜はこれからもたくさんあるけれど、
その人と昼夜築いたたくさんのものがあるから、
掴んだものは全部零れてしまったわけじゃないから、
今は大丈夫です。
みんなロケットに乗っていくのかもしれないけれど、
わたしもロケットに乗ってしまったけれど、
わたしはわたしの星に来てくれた全てに本当に感謝したい。
花を咲かせてくれた。
雨を降らせてくれた。
照らしてくれた。
道や家を用意してくれた。
生かしてくれた。
ありがとう。
生まれ変われはしないけれど、
変身は、します。
ありがとう。
【日常の最新記事】

