2014年09月14日

直角なぼくら

かなえさんは、ふわっと笑って消えてしまった。
できるだけ灰を散らさないように、匂いをのこさないように、深呼吸のような衣擦れだけを僕に残して、消えてしまった。

僕らは、なんでもない話をして、思い出しづらい生温い幸福を重ねたけれど、中身を、言葉にしたことはなかった。
どう見て、どう思うか、表現すれば良かったのかもしれない。
けれども僕は思うのだ。
言いたいこと、言わなきゃいけないこと、言っちゃいけないこと、言わなくていいこと、が世の中にはあるけれど、
言いたいけど言えなかったこと、は、たぶんいつだって、言わなくて良かったこと だと。

同じ視点になるのは無理だし、真っ向勝負の度胸も僕にはない。
見ない振りができるけど、さわることもできる距離と角度。
僕はかなえさんのそういうところが、たまらなく愛しかった。
かなえさんはたぶん、本当はその倍さみしかっただろう。

消えてしまったかなえさんは、一晩で血をからしたあの夜の前に、また望んで佇むんだろう。
僕らはもうあの小春日和のような汗をかくことはない。

今僕は思う。
最期に言い残したことはないかと聞かれたら、その時には、
あなたを愛している、と打ち明けたい。

posted by はるな at 12:15| Comment(0) | 妄想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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